潔癖症の一側面

ここでは「潔癖症」を、不衛生なものに対する嫌悪感だけでなく、risk-averseな傾向全般を指す語として用いる。


例えば、消費期限を過ぎている食べ物を決して食べようとしない人間がいる。

特に子供に多い。

もちろん、過去に消費期限を過ぎたものを食べた腹を壊した場合には、妥当な判断かもしれないし、妥当とは言えなくても過去の嫌な経験を強く避けようとしているだけかもしれない。

ただ「消費期限の過ぎたものを食べて腹を壊した」という経験がなくても、やたらとそれに拘る人間はいるのである。


結論から言うと、「避けるかどうか」は「損害がどの程度か」よりも「避けることがどれだけ容易か」に強く依存するのだと思う。

容易というか、(他人の力による場合でも)過去に非常に高い頻度でそれを割けることができたのであれば、それを避け続けようとする。


ただ「腹を壊したことがない」のであれば、消費期限は単なる数字に過ぎず、それを強く忌避するのは不可解ではある。

もちろんそこで「古いものを食べるとよくないことが起こりそう」という想像は働くだろうが。

その場合「(悪いイメージを伴う)未知のものへの恐怖感」ということになり、確かにそういう側面はあるように思う。

ただむしろ「それまでの(それを避けてきた)経験に引っ張られる」というのが個人的な実感に一番近い。



倫理的な高潔さも「必要に応じて手を汚したが、最終的には汚さずに生きていく術を見出した」という場合よりも、単に「手を汚す必要がなかった」ことによる場合が多い。