並立させたいものと並立するもの

人間の行動にしろ、組織の判断にしろ、好ましいものを全て実行するのは不可能なことが多く、現実的には取捨選択が必要になる。

好ましいと考えられる行動A〜Dがあったとして、時間的・コスト的な制約から4つのうち3つしか実行できないとする。

その制約条件が最初から分かっていれば、4つの行動に優先順位をつけ、順位の上から3つを実行するといった具合に合理的に振舞うことができる。


しかし現実的には、制約条件は必ずしも自明でないことが多い。

制約条件が自明でない場合には、自ずと欲求そのものに基づいて行動決定することになる。

A〜Dのうち、2つにしか関心を示さない人間は、その2つのみを狙うし、A〜Dの全てに関心を示す人間はそれら全てを狙う。

だが自明ではないものの、実際は上記のように「3つまでしか手に入らない」という条件があったとすると、2つにしか関心を示さない人間は、結果的に2つとも手に入れる可能性が高いし、全てに関心を示す人間は一つも手に入れることができないかもしれない。

単純に考えれば、あるものを欲する心理が強いほど入手する確率が高いわけだが、上記のような制約条件のもとでは必ずしもそれが成り立たなくなる。


ゆえに「全てを手に入れらるわけではない(ので一部に注力すべき)」という先達のアドバイスは正しいわけだが、しかしそういうアドバイスを気の多い若者が生かせることはまずないだろう。

なぜなら「多くのものに関心がある」ことは事実だし、「全てを手に入れることができない」のは経験として理解しているのではなく、あくまで他人のアドバイスに過ぎないからだ。

そういう状況では、まず間違いなく自身の欲求の方が勝る。