「美しい思い出」とか限定された範囲での最大化とか

「過去の思い出は美化されやすい」とかそういう話ではなく。

例えば初恋の人が最近自分の家の近くに引っ越してきた、という話を聞いて

「理由をつけて会いに行けないこともないけど、どうしようか?」

と迷うような状況。

もちろん、深く考えずに「付き合えるかもしれないし、会いに行こう」と考える人もいるだろうけど、中には「彼女の存在は空想の中に留めておこう」と考えて、会いに行くのをやめる人もいるかもしれない。まぁ年取って容貌が衰えているとか、そんな可能性もあるし。


こういう葛藤は他者との関係に限らない。

例えば、芸術家が新しい作品のアイディアを閃いたけど、作成する資金がない。

過去の自分の作品を売れば資金が手に入るけど、過去の作品にも多少未練がある、みたいな状況も考えうる。


いやまぁなんつーか、「初恋の人の思い出」も「過去の自分の作品」も自分にとって無価値ではないだろうから、その価値とそれと引き換えに手に入るものの価値を比較して行動決定すればいい話なんだけど。

ただその判断が合理的にできるかというと結構難しくて、自分の場合はすでに得ているものを捨てて新しいものを手に入れる方が合理的だと分かっていても、ついついすでに得ているものに執着してしまう場合が多い。

それにこの手の問題は「現在得ているもの=確実に存在」「将来手に入るもの=手に入るかどうか不確実」の場合が多いので、不確実性とどう折り合いをつけるかという側面もある。

確率が正確に見積もれるのであれば、期待値(価値×得られる確率)を計算するという方法もあるけど、正確に見積もれるケースは少ないし、人間の本能として不確実なものは期待値よりも低く見積もるケースが多いと思う。


あと「手元に残しておく」という行為は選択肢を減らさないという意味で魅力的なのだが、実際にそれにアクセスする頻度はかなり低かったりする。

この点でも「残すか捨てるか(引き換えに別のものを得るか)」という判断の際に、残した場合の利点を過大に見積もる可能性が高そう。